フリーランスエンジニアの確定申告——家賃・光熱費・PC代金、実際どこまで経費にできるか
フリーランスになって最初に戸惑ったのが確定申告だ。会社員時代は年末調整で終わっていたのが、自分でやることになる。「経費で落とせる」という話は聞いていたけど、具体的に何をどう計上していいかがわからなくて、最初の年は国税庁のサイトを行ったり来たりしながら手探りで申告した。
今回は特に迷いやすい家賃・光熱費・PC代金の扱いを中心に、自分が実際にやっている経費計上の実例を書いていく。税理士ではないので最終判断は専門家に確認してほしいが、フリーランスエンジニアとしての実務経験をもとにした参考情報として読んでもらえればと思う。
前提:青色申告か白色申告か
経費の話の前に、申告方法の選択に触れておく。青色申告(65万円控除)を選んだ方が節税効果は圧倒的に大きい。開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出すればいいだけなので、フリーランスを続けるなら迷わず青色申告にしておくことをすすめる。
青色申告の主なメリット:
- 最大65万円の特別控除(e-Tax + 複式簿記の場合)
- 赤字を3年間繰り越せる
- 少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産を購入年に一括で経費計上できる)
3つ目の少額減価償却資産の特例が、後のPC代金の話に直接効いてくる。
家賃——按分の計算方法と実際の割合
自宅で仕事している場合、家賃の事業用割合を「按分(あんぶん)」によって経費計上できる。全額をそのまま経費にはできないが、業務に使っている部分を合理的な基準で計算すれば問題ない。
面積比での按分(最もシンプル)
税務署に根拠として説明しやすいのは床面積の比率だ。
# 按分計算の例
自宅の床面積:60㎡
仕事部屋の面積:10㎡
按分割合:10 ÷ 60 ≒ 16.6%
月家賃:100,000円
経費計上額:100,000 × 16.6% = 16,600円/月
年間経費:16,600 × 12 = 199,200円
専用の仕事部屋がない場合、使用時間の割合で按分する方法もある(「1日8時間、週5日業務利用」など)。ただ面積比の方が根拠を説明しやすいので、書斎コーナーでも明確に区画できるなら面積での按分が楽だと思う。
按分割合が極端に高い(50%超)と税務調査の際に説明を求められやすいという話を聞いたことがある。自分は30%以内を目安にしている。
賃貸契約の名義と注意点
賃貸契約の名義が個人名でも業務用に使用していれば按分で計上できる。ただし賃貸契約によっては事業利用を禁止しているものもあるので、契約内容は確認しておく方がいい。
光熱費——電気代・ネット回線・スマートフォン
光熱費も家賃と同様に按分で経費計上できる。主に電気代・インターネット回線料金・スマートフォン代が対象になる。
電気代
電気代は家賃と同じ面積比で按分するのが一般的だ。按分割合を統一しておくと帳簿の整合性が取りやすい。
# 電気代の按分例
月の電気代:15,000円
按分割合:16.6%(家賃と同一)
経費計上額:15,000 × 16.6% ≒ 2,490円/月
年間経費:約29,880円
夏場にエアコンをよく使う月は電気代が上がるが、按分割合は年間で固定しておく方が管理が楽だ。
インターネット回線
自宅のインターネット回線は業務利用の割合が高いので、自分は70%で按分している。リモートワークが主体なら70〜80%でも合理的な説明がつくと思う。月額5,000円の光回線なら年間で42,000円(70%計上の場合)の経費になる。
スマートフォン
クライアントとの連絡・二要素認証・外出先でのリモートアクセスに使うので50〜60%で按分している。プライベートと業務で端末を分けていれば100%計上できるが、そこまでする人は少数派だと思う。
PC代金——購入価格によって処理が変わる
エンジニアにとって一番金額が大きい可能性があるのがPC購入費だ。金額によって3つの処理パターンに分かれる。
10万円未満:消耗品費として一括計上
10万円未満のPCは購入した年に全額を消耗品費として計上できる。エントリーモデルのノートPCや中古PC、モニター・キーボード・マウスなどの周辺機器の多くがこの範囲に入る。
10万円以上30万円未満:少額減価償却資産の特例(青色申告限定)
ここが青色申告の大きなメリットだ。租税特別措置法28条の2の規定により、青色申告者は30万円未満の資産を購入した年に全額を一括で経費計上できる。MacBook ProやThinkPad上位モデルなど、エンジニアが使うPCの多くがこの範囲に収まる。
# 少額減価償却資産の特例(青色申告)
対象:30万円未満の減価償却資産
処理:購入した年に全額を一括経費計上
上限:年間合計300万円まで
例:MacBook Pro 14インチ(税込220,000円)を業務用で購入
→ 購入年に220,000円を全額経費計上(工具器具備品 または 消耗品費)
ただし年間で合計300万円を超える場合は特例の対象外になる。通常のフリーランスエンジニアで300万円を超えることはまずないが一応確認しておく。なお本特例は時限措置で、現在は令和10年3月31日まで延長されている。適用前に最新の税制改正情報を確認することをすすめる。
30万円以上:減価償却
30万円以上の資産は通常の減価償却になる。パソコンの法定耐用年数は4年(サーバー用途は5年)なので、定額法なら購入金額を4年間に均等に分けて計上する。
# 減価償却の計算例(定額法)
購入金額:400,000円
法定耐用年数:4年
年間の償却費:400,000 ÷ 4 = 100,000円/年(4年間)
少額減価償却資産の特例が使えないので、30万円以上のPC購入は節税の観点では不利になる。機材選定の際に30万円を境界として意識しておくのも一つの考え方だ。
ソフトウェア・SaaSも忘れずに
見落としやすいのが月額・年額のサブスクリプション費用だ。以下のようなものは全て経費になる。
- 開発ツール:JetBrains IDEライセンス、GitHub Team/Enterprise
- クラウドサービス:AWS・GCP・Azureの利用費(業務用)
- デザイン・ドキュメント:Figma、Notion、Confluence
- AI ツール:Claude API、ChatGPT Plus、GitHub Copilot
- 書籍・技術書:業務に関連する書籍(新聞図書費)
- 勉強会・カンファレンス:参加費(研修費)、交通費
これらを月次で漏れなく計上していくと、年間でかなりの経費額になる。会計ソフトのクレジットカード連携を使うと計上漏れが減る。
まとめ
- 家賃・光熱費は面積比で按分。電気代・回線費・スマートフォンも合理的な割合で計上できる
- PC代金は30万円未満なら青色申告の少額減価償却資産特例で購入年に一括計上が可能
- 30万円以上のPCは4年間の減価償却。節税効果の観点では30万円未満の選択が有利
- SaaS・クラウドサービス・書籍など月次で発生する費用の計上漏れに注意
- 青色申告(65万円控除)は開業届と承認申請書を出すだけで選択できる。フリーランスなら必須
確定申告で判断に迷う部分が出てきたら税理士への相談が確実だ。最近はクラウド会計ソフト(freee・マネーフォワードクラウド確定申告)と組み合わせて、年1回だけ税理士にチェックしてもらうパターンが費用対効果が高いと感じている。